5分後に孵るのを待ってる
」のレビュー

5分後に孵るのを待ってる

チ点日子

入れ子のように作用するお互いへの思い

ネタバレ
2022年11月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ ありきたりの幼なじみモノに飽きた方にオススメかも。
まずキャラが凝っています。
共依存の形成が拗れているので恋愛成就へのアプローチがちょっと変わっています。
以下ネタバレ
………
睡眠発作を患っている沙世はノンセクの疑いもある幼いのにどこか冷めた大学生。
生活能力が無い沙世と同居して抱卵するようにお世話をしている孝己。
一見して沙世がへんてこりんで孝己がまともに見えます。
しかし、孝己の方がメチャクチャややこしい異常な男である事が読み進めるに従って明らかになっていきます。
その発芽が小学生の時に知らない男に襲われたとき、気持ち悪いのに出してしまった理由です。私は、襲われながら自分が襲う側になって沙世をどうにかしたい(暴力も含めて)と思ってしまったから、と読みました。
その危険な気持ちを発散させるために中学生時から性行為を繰り返します。
行為を気持ち悪い事と位置付け、それを繰り返す自分も気持ち悪いモノと自分自身に刷り込ませているようです。
自分の「貞操観念」がおかしいと薄々気づきながらも、「好きじゃない人とセッ●スってしたらいけないことなのか?」と思っていたこと。
更にセフ●との行為は「戒め」のために行っていたこと。
気持ち悪い行為を沙世にしたくないから自分をそういうふうに「作り変えてきた」こと。
異常なのに、全てが沙世の為だったという健気な純情がキチンと伝わりました。なので本編ラストの孝己のセリフはとても響きました。
トドメの捻りは描き下ろしで明らかになった沙世の人格形成の理由です。心配するあまりに出た孝己の「なにもしないで」が本心として伝わってしまった。(それは本心の全てではないのに。)何よりも大事な孝己のいう通りに生きてしまったからだと思いました。元々は賢く探究心もあり男前な性格の沙世が無意識に凍らせてしまった恋だったのだな、と思いました。でも恋以外はちゃんと孝己の望む通りでいようと、いつか離れる日を想定しながら卵に擬態している沙世もすごく健気で泣けました。

お互いがお互いを大事に思うあまりにへんてこりんな方向に拗らせた恋のお話。面白かったです。
蜂須賀は孝己に本気愛だったんじゃないかな?たつきも。
修正は白抜きです。
いいねしたユーザ25人
レビューをシェアしよう!