60億分のふたり
」のレビュー

60億分のふたり

でん蔵

全文ネタバレ、本編読んだ人向けです

ネタバレ
2022年12月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 以下全てネタバレです。読んで色々考えちゃった人一緒に考察しましょう。

気になるキーワードは神様。織田の言う「俺の神様」と執着の理由がやはり作中では曖昧です。だから憶測で楽しむことにします。
生まれつき優秀な織田は周囲を見下し退屈な世界にいました。 しかし死にかけたことで否応なしに心の声が聞こえるように。心の声はコントロールできず、初めて思い通りにならない世界に取り残されます。周囲の理解なんて必要としてこなかったこれまでと違い、特殊な状況に1人置かれて絶望的な孤独に苛まされます。

そうして出会えた香藤は唯一のまともな存在。姿こそ同じですが、60億人が一瞬で宇宙人や怪物に変わった世界でただ1人の人間なんですから絶対離れたくないはずです。そうなると織田がヤンデレになるのも理解できます。
ですがどうして神様なんでしょう。 織田の思考が大きく飛躍する瞬間が2話の最後にあります。思い悩む香藤を見て「心から笑わせてやりたい」と温かい思いやりを持った数ページ後に、友達が1人もいないと知って「俺だけの物なんだ」とヤンデレ笑いしています。怖いです。
3話でついに香藤も心の声が聞けると判明し、織田の暴走は止まらなくなります。 世界中で俺にとって特別な存在という構造から、世界中で俺たちだけが特別な存在に変わります。選民思想で選ばれた2人と確信を持ち、織田は香藤を自分より特別な存在として神格化します。
さて、気になるのは4話で突然香藤が普通にもどる点です。もちろん織田の行為が原因です。なぜ香藤だけ元に戻ったのか?普通に戻りたいと犯されながら香藤が願ったことに原因がある気がします。つまり香藤には周囲を無意識に世界をあやつる力が確かにあった…?
心の中でトラックが突っ込めと言えば現実になるし、死ぬな織田と言えば生き返るし、織田と友達になれるし、普通に戻りたいと思えば普通に戻った。手に入らなかった死も夢の中でですが、手に入った。
言葉として書かれていないですが、香藤が願ったことはもう一つ。夢の中で架空の同級生になじられる中、後ろから抱きしめて香藤の味方だ、香藤が大事だと言う織田。香藤は本当は、織田の死を願った反動から織田に許されること、そして織田との特別な関係を願ったのかもしれません。
香藤が普通に戻ったいま、織田は神なのか?なんなのか?謎はつきませんが2人とも幸せならオッケーです。
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