四人のにびいろ
」のレビュー

四人のにびいろ

akabeko

インモラルの枠を超える異父兄弟間

ネタバレ
2023年5月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ BLと893やさんとの親和性について考える切っ掛けになった作品です。
今やその構成員は日本全国で僅かに2万千人強だそうで、しかも20代は1200人前後しか存在しないらしいです。更に毎年減少し続けています。(それは良いことですが、逆に半グレ勢力が増大しているとか…)
変な感性かもですが、衰退していく儚さと命を賭して面子や義理を通す危うさとを掛け合わすと、他では得ることのできない独特の空気を感じてしまいます。

今作のタイトルでは4人ですが、メインCPは異父兄弟です。その執拗な幼少期から現在に至るまでのトラウマに縛られ続けもがき苦しむ様が、前述の独特な空気の中で描かれて胸により突き刺さったのだと思います。
あとがきにて先生も仰っていますが、この世界の事柄とBL要素の割合バランスがとても良いです。
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さてそのBL的要素ですが、えっちの組み合わせが色々と描かれています。そこに愛は有るのだと解るのですが、ほとんどラブラブが有りません。まさに鈍色。エロいことをしているのに、まるで砂嵐のテレビ画面の中で行われているような無味で曖昧な印象を受けました。と思ったら、ねちっこい執着や狂気も感じます。その理由は最終巻まで読んでやっとそうか!と思ったのですが、3巻あとがきにて先生が明確な回答を仰っています。こんな難しい心情を描写し描き切るなんてホントさすがとしか言えません。

さて4人のうちのひとり、黒髪のミステリアス担当ベティ氏の存在が最初から最後まで良い意味で引っ掻き回してくれています。このベティちゃんが裏社会に身を置いている経緯が、今なおリアルでも社会的マイノリティの引受先が国ではなく裏社会である悲しみに通じているのも切なかったです。
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余談ですがその昔、梶原一騎原作の漫画「愛と誠」という大ヒット純愛作品があってですね、今作は「相と誠」なんですが純愛の枠を大幅に超えてきましたね。さすがはakabeko先生です!(2回目
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(蛇足かもですが、構成員は1次団体と2次団体両方に所属している人がいて所属先によって名称が変わります。2次では組長の人が1次で若頭と呼ばれたりします。)
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