藍より甘く
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藍より甘く

一穂ミチ/雪広うたこ

小説なのに色彩豊かな映像美

ネタバレ
2023年11月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ BL小説。ミチ先生、やっぱり大好き。単行本一冊で完結です。挿し絵なしなので外で読んでもほぼ大丈夫。
奥付みたら2009年初出(電子版は2014年発行)、ずっと前からこんな高品質の小説書いていらしてたんですね。。毎回読むたび繊細な風景と心情描写に感動させられる。先生が書かれるシリーズでは気の利いた会話中心の小説もあるけど、この作品は藍染めの色がテーマだけあって、色彩描写がとても豊か。小説なのに映像美な作品で、読んでると上手なカメラワークと共に色彩豊かな風景が浮かび上がってくる作品なんです。
実直で気のいいノンケで彼女もちの大学生の入江が、バイトも同じの親友だと思ってた遥に観覧車のなかで突然告白されてしまうシーンから始まります。くっつくまではノンケの入江視点なので、彼のデリカシーのなさがあんまり強調されないけど、これ確かに遥くん、かわいそうに。。それでも後半とおまけと単行本発行されてるassort mix+helloの番外編3本で、入江の嫉妬や執着が語られ補完されてるからよいとしよう。
忘れないでっていう花の名前について会話してから、駅で自動販売機でクリームソーダ買って飲んで美味しくないって気づいて、電車の窓から遠くの青い車で見送られるこの一連のシーン、あからさまでなくて風景や物事から登場人物も気づいてない心情を語るっていう、こういうの書けるのはミチ先生だけですよね。。そのあとちゃんとクリームソーダも回収してるし。少し前で何気なく書かれてることが、ちゃんと意味を持ってて大っぴらでなくあとで回収されるっていう書き方も、文体も素晴らしく上手。それにミチ先生は、切ない男の子書くのもほんとうにほんとうに上手。
あーーー、BLずっと書いててほしかったーーーミチ先生のこういう一巻完結もののBL新作、また読みたいーーー
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