紙の舟で眠る【単行本版】
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紙の舟で眠る【単行本版】

八田てき

大丈夫だからマスト買い(強火長文)

ネタバレ
2024年1月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ 新刊作者さん買い。たしかに純文学BLで再読必須。
まず大きな声で言いたいのは、最後まで読んで大丈夫。BLデビュー作がアレだったので(私は星10つけたけど思い出しただけでアレなので再読できない)、怖がる読者さんいるかも。でもこの作品は大丈夫ですよ!
二作目のギャグ漫画振り切れすぎの作者さん、引き出し多すぎて頭の中覗きたい。映画や書籍をたくさん読んでこられたんだろうな。

間違いなく作者さんは全部完璧にプロット立ててから連載開始してますね。もしかしたら完成してから連載開始したのかな。23年5月にWeb連載開始、11月に最終幕手前までWeb掲載して12月単行本上下巻発売。この短期間で戦後の混乱から発展する日本の映画界を舞台とした夢うつつを行き来する重厚なストーリーと、背景や小物全ての時代考証も必要なのに完璧な描き込み絵を併せもった作品を創作した作家さんは私にとって初めて。心から尊敬します。作者の作品への熱意だけでも買う理由になりますよ。シーモアさんでレビュー数がまだ少ないのが信じられないし、この作品が売れなかったらそれは世界がおかしいと思う。。

戦後混乱期を生き延びた空っぽな写真家見習いと、死神から溢れる言葉を紡ぐ脚本家の話。難解なモノローグ、脚本家視点での夢うつつのシーン(現代と違って薬の規制があまりなかった時代、眠らないため集中力を増すため等々の理由で脚本家さんは薬物を常用していて、その結果元々夢想家だったのがさらに幻覚を引き起こしていたはず)があり、ストーリー自体はテンポよく進んでいくけど、読み流すことはできません。じっくり読むか再読して、様々な会話や絵の伏線を拾ってください。

あまりにもクオリティ高すぎだからこそ欲を言いたい。ページ数に限りがあったからか、上巻の蜜月時期でのエピソード描写がもう少し欲しかったな。甘いシーンと笑顔が上巻中盤以降は回想にしか出てこないので、この人たち気づかずこんなに求め合ってるのに、何だかいつも辛そうだったよっていう印象になってしまう。

あと小さな声でいいますが、電子特典がないので、紙本で有償特典買う方がいいかも。もちろん電子版単行本にも描き下ろしの最終幕とその後話は収録されてるけど、それだけでは全然足りない、甘々ラブが。。上下巻で辛い悪夢のシーン満載のあと、安心して和やかでかわいいふたりをもっと眺めていたかった。。
有償特典の電子化、切に希望します。
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