夏くゆる好色男の宿
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夏くゆる好色男の宿

akabeko

好色男はくすぶり後に立ち昇るのはエロ気?

ネタバレ
2024年1月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ このシリーズ、タイトルで西鶴の好色一代男を思い浮かべてしまいます。あちらの好きモノ世之介は3742人の女と交わったとされていますが、我らが藤男くんは一万人斬り!(らしい。)しかし男は美春が初めて。そして最後の男であって欲しいです。ちなみに西鶴の世之介の男経験人数は725人だとか。。あぁ蔭間文化……。

それはさて置き、前作では敢えて深堀らなかった藤男さんの得体の知れない不気味さを紐解いていく今作、更に洗練された表現力にて面白さ倍増でした。
サイコっぽかった藤男が徐々に人間らしくなっていく過程。美春の揺れ。志賀子さんの気持ち。それらが極力言葉やセリフで表さず『絵』やコマ内の位置、コマの流れ、更に1ページごとのデザインで届けて下さっています。
傾いたクリームソーダ、ひび割れ模様のテーブル、顔に貼るトーンの分量、眺めた景色、等々わかりやすい間接表現がホント粋でたまりません。
誤解を恐れず言うならば、akabeko先生ってパッと見では粗いかな?と見せかけて、実はすっごく繊細で上品な表現をされるなぁと感じています。前述の婉曲表現もそうですし、今作の一番の泣かせどころで、一切の涙、感動の言葉、明確な絵が使われていないのです!なのに確実に胸を突いてくる。直裁イコール下品とは申しませんが、人の心ってダイレクトじゃない部分で響き合うと品の良さを感じるようにできてるのかなと思いました。
上品すぎると解りにくくなりがちですが、そこの兼ね合いも完璧です。さーっと読んだとしてもちゃんと解る。でもじっくり読むと更に感動が深まる。そのドンピシャなライン上で描かれているなあと思います。

叡智は、それはもうスゴいですよ。あれ?さっきの上品どこ行った?ってなもんです笑。受ける方は開脚する関節が柔らかいですよね笑。

この調子で秋と冬もお願いします!
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