何もしてないのに壊れた
」のレビュー

何もしてないのに壊れた

時羽兼成

穴の開いた風船のよう

ネタバレ
2024年5月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ タイトル、本当に最初は「何が?」なんですが読み終えると「辛すぎる」タイトルに変わってるんですよ。

これは、受けや攻め…というかタチネコが決まらぬまま崩れるお話です。まるでジェンガですよ。バランス崩すと崩壊する。大人3人、純粋な気持ちに嫉妬が絡んだことで砂の城にかかる雨水の如く、キャパを越えたら呆気なく砂の城が崩れちゃうんですよ。我々はその様を見守る保護者の立場なのです。作った子どもは悲しみと怒りと少しの興奮で泣き暴れ、我々保護者は何がダメだったのか、仕方がないことだと解くも当の本人は「完璧だったのに」と幼心ながらに真剣な顔で、涙をボロボロ流して声を上げて泣き続けるのです。
何がダメなのかわかっている大人は、子どもの何がダメだったのか無情に告げるも彼らの気持ちが切り替わるまで泣かせてあげるしか手立ては無いのです。


辛い。
辛すぎるよ…


タイトル、何もしてないのに壊れたは、誰の立場から見た時点だろう。
3人の三者三様の一方通行。一文→大倉、大倉→あたる、あたる→一文。一文は大倉の、才能からくる羨望とお笑いへの真剣さ。大倉はあたるへの愛欲と。あたるは一文へのお笑いへの真剣さと羨望を。地獄のトライアングルは「嫉妬」と「焦り」によって見事に終わりを迎えるんだけど、「嫉妬」や「焦り」の時点でもう始まってるし、その「焦り」が本質を見れてなくて壊しちゃったんだよ。
いくらお笑いに才能があったって、所詮は人間だもの…いま、大倉とあたるは何をしてるんだろう。大倉は自暴自棄になって手当たり次第、食い散らかして痛い目みてる所で逆にあたるにお世話されてて欲しいな…

こういった、崩壊して終る商業BL、滅多にないから増えて欲しいな…BLといえばハッピーエンドかもだけど、今この世界にいる男たちの現実を見たいので…よろしくお願いします…書いて世に出してくださった先生、編集部、担当さんありがとうございました!!
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