どちら様が愛を告ぐ
」のレビュー

どちら様が愛を告ぐ

仁嶋中道

なんて誠実な物語なんだ!

ネタバレ
2024年7月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ いろんなことを深く考えさせられる、さらりとは読めないお話です。
仁嶋先生はいつも人の心、気持ちを大切に描かれる作家さんですが、今作も隅々にまで気遣いや思いやりが行き届いていて、やるせない展開にも不思議に心安らぐような物語になっていました。
友情でも愛情でも人が相手の事を真剣に思う時、こんなふうに心を傾けて向き合っていくんだなと、その誠実さに救われるような思いがしました。
私も彼らの思いをしっかりと受け取らなきゃと、言葉や表情はもちろん表に出ていない部分まで感じ取りながら、最後まで大事に大事に読みました。
仁嶋先生の作品は気持ちの描き方がとても繊細なので、その一つ一つを取りこぼすことなく拾い上げたいと思わせるんですよね。こちらの読む姿勢まで変えさせる。こういう作品ってなかなかないんじゃないかと思います。

渚には言わないことはあるけど、それは千波のことを思ってのことで、彼らはお互いにずっと真摯に接し続けています。信頼関係を築いていく中で惹かれあっていくのがとても自然で、家族との悩みや苦しさの陰で寄り添っていく心にとても癒されました。絶対に嘘つかないって約束するって言葉がすごく良かった。
別れも後悔もあったけど、最後には千波自身が納得のいくところに落ち着いて、読後は温かいもので胸がいっぱいになりました。
仁嶋先生は本当にストーリー作りが上手いです。毎作品一筋縄ではいかない入り組んだ関係を描きながら、一つ一つを丁寧に解いていき、前向きに歩き出すところまで、一冊できっちりと纏め上げて感動の余韻を残す。この手腕、本当にすごいと思います。仁嶋先生やっぱり好きです。
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