もう少しだけ、そばにいて
」のレビュー

もう少しだけ、そばにいて

白野ほなみ

依存か献身か執着か純愛か

ネタバレ
2024年10月20日
このレビューはネタバレを含みます▼ 重いテーマなので、かなり覚悟して読みました。
事故により下半身不随になった晴人と、そのパートナー・晃の物語。

結構な問題作。
二人の苦悩はリアルで重く、真に迫っていて…その分、感動も大きかった。

もしもこの作品が気になっている人は、とりあえず読んでみるといいんじゃないかな…
私は読んでよかったと思いました。


【以下 超ネタバレ注意】



さて、問題のエピローグ。

あれは絶対に必要だったかな……
私はあの申請証は生涯使わなかったほうが、物語としてしっくりくるような気がしました。
どんなに絶望しても、生きようとした二人の物語だと思ったから。

だけど作者様は、敢えて最後に強烈な問題提起をして物語を完結させた。
その作者の意図を消化しきれず、今もずっと考えてる。

そもそも認知症の患者が安楽死を希望して、申請がおりるのか疑問だった。
調べてみると、海外では認可が下りる国もあるらしいです。
ただこういう判例はあっても、認知症前と認知症後、どちらの本人の意思をとるのかという問題もあって、調べれば調べるほど何を尊重すればいいのかわからなくなりました。

晴人のあの決断は、生きることを諦めたうえでの結果ではないと思う。だから晴人は最後まで「悲劇でない」と確信できた。
そこが一番大事な気がするけど……実際のところ認知能力が衰えた状態で、そこまで重大な意思と決断を貫くことができるかなと思った。

そして晃…
二人の出した結論にこれ以上何も言うつもりはないけれど、最後の晃の微笑に一瞬 陶酔に近い何かを見たような気がしたのは私の考えすぎかな――。

安楽死について調べているときに出会った、「安楽死は正解のない哲学」という言葉がとても印象的だった。
真摯に悩み、苦しみ、共に生きた二人の人生に、今はただ敬意と祈りを捧げたい。

重く、深く心に残る作品でした
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