アダムの肋骨
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アダムの肋骨

みちのくアタミ

BLとしてチャレンジに溢れた一作

2024年12月11日
遊園地で着ぐるみの中の人として働く男が、誘拐犯から子どもを助けてくれた男と社員寮のルームメイトになったことから始まる不思議な恋のお話。
これはBLという括りでは話が進まない作品だと思います。ミステリー調でお話が始まるので、徐々に過去の繋がりが明かされていくのかなと思いましたが、カズハがあっさり多重人格だと分かります。また、過去に悠真と出会っていたことも明かされますが、お話の難しさはここからスタートといっても過言ではありません。たくさんの人格たちとのやりとりや統合へ向けての治療、悠真という最重要人物との愛の進展など、今まで読んできたBL作品たちとは一線を画す難題が降りかかります。そういった意味でも、愛の形成ではなく、愛の作用にスポットを当てた本作は人の心の奥深くに触れる難しさと、人に真摯に向き合う悠真の優しさや真面目さをよく表していると思いました。
統合していく過程は少々簡略化されていると思いますが、全く異なる性格を表情やセリフだけで表現しているのは見事だし、現れる性格のタイプなども、題材をとても良く調べているからこそだと感じました。また、悠真とレイのえちにカズハが乱入するところなどは、体では一対一なのに、精神的な部分では完全に三人でのえちで、特殊で新しい3Pに見えました。こういう設定でのえちは初めてで、斬新なアイデアだと思いました。この難しい作品を描ききった作者様に感謝と尊敬を抱きました。
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