螺旋じかけの海
」のレビュー

螺旋じかけの海

永田礼路

バイオSFの傑作

ネタバレ
2025年2月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読みホから。
一気に5巻まで読み終えて、改めてタイトルを眺めしみじみ感じ入っています。とにかく良作間違いなし。
星雲賞にノミネートされただけあってバイオSFの傑作だと思います。

近未来ディストピアとキメラの取り合わせで、シリアスな題材をコミカル混じりで描くのはルパン3世っぽくて馴染み深いです。
1話2話と謎も多いが面白く読み、3話でガツンときました。しかしそれも序の口だったかのように物語はどんどん深く濃くなっていきます。

まずキャラがイイ。くたびれたオッサン主人公をはじめ、それぞれが深刻な事情を抱え、それゆえに魅力的で、人物が立体的に生身で迫ってきます。

また、現実社会に物申す!ようなセリフがイイ。マズイことを言い当てられた気まずさと、良く言ってくれた!と思う爽快感と、両方とも含んでせめぎ合いながら胸にズシンと降りて来る重みと。読んで息苦しいのに高揚感があるような不思議な感覚になりました。

そして、専門性に裏打ちされた世界の設定が素晴らしかったです。なぜ世界はこんななのか?なぜ主人公はこうなってしまったのか?初めからあるモヤモヤを上手く隠しながらも、読み進めるにつれて明かされていきます。1話読み切り方式ですが、どんどんと自然に物語に埋没していける感覚が気持ちよかったです。

社会問題や医療技術の可能性、そこから派生するだろう闇、人とは?命とは?の問いかけ。自己の存在意義。様々な視点で読めると思いますが、やはり人情の描き方がピカイチでした。何度も涙する場面がありました。
いいねしたユーザ17人
レビューをシェアしよう!