皇帝と女騎士
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皇帝と女騎士

Team IYAK (winter・heyum)/G.M

男でも女でもなく、ポリアナという人間

ネタバレ
2025年3月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ 昔から男装の麗人モノが好きでよく手に取ってきました。本作も男勝りのポリアナに惹かれて読み始めたのですが、「そういうジャンル」だとして無意識に先の展開を予想して読んでいた自分をガツンと殴られたような衝撃を何度も受けました。自分の浅慮が恥ずかしい…。

本作では、男しかいない軍の中でモテモテになったり、女の恰好をしたら急に美人になってドキッ、そういうお手軽展開はいっさい起こりません。(ちょっと期待してた)やむなくドレスを着たポリアナは、気の毒になるくらいドレスが似合わない。逞しいガニ股マッチョ女の誕生(笑)しかしこの体型はポリアナが騎士として生きてきた証であり誇りなので、むしろ現実はこうでなくてはならない。
ストーリー上の唯一のときめきポイントが、美形皇帝ルクソスとの心の通い合いなのだが、これもあくまで臣下としての敬愛…全くブレないポリアナ…ラブは、ラブはないのか?

元の配信サイトでは完結していておそらく全15巻になるところを、シーモアではまだたったの3巻しか配信されておらず。冒頭で皇帝が「愛」って言ってるからこの先ラブもある…んだけど、それよりもポリアナが女騎士であることで、何度も何度も、壁にぶち当たり、悩み、主張し、怒り、傷付き、選択していくんです。男社会では女であることで様々な制約を受け、女社会ではもう女のようには生きられない。男でも女でもないポリアナという存在。

美麗皇帝となにも持たない女騎士のシンデレラストーリーのように見せかけて、よくぞここまで掘り下げて下さったなというくらい、戦場で生き抜いてきた一人の人間の半生を描き切っています。私も漫画を自分の中のジェンダーバイアスで読んでたなと反省。

フィクションではあっても彼らはこの世界の中世的規律に従って生きているので、スッキリしない部分もあるかもしれませんが、それでもポリアナの生き様は尊敬に値します。唯一無二の女騎士ストーリーで、強くお勧めします。
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