目眩はまどいのつがい
」のレビュー

目眩はまどいのつがい

早寝電灯

まどって、生きる。たまんないな

ネタバレ
2025年3月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 早寝電灯先生が描く作品の、正しく生きようと真摯に努める主人公たちが大好きです。静かに己と向き合うその姿には、どの作品を読んでいても憧れます。

本作は年齢が少し離れた二人の穏やかで優しいオメガバース。アルファで年上の和巳さんは自制心の強い大人な男性。欲を律し、アルファとして優位であることに抗います。オメガの波止くんは大切に育てられてきたキュートな男性。おっとりだけど芯が強く、つがい=アルファの保護と考えることに違和感を持っています。そんな二人が地震という非日常の中で出会い、相性の良さからなる身体共鳴を起こしながらも敢えてゆっくりと関係を築いていく。

和巳さんの穏やかな物腰の奥からうっすら覗く独占欲と囲い欲がたまりません。それに結構前から波止くんのことを気にしてるっぽいのがまた…。ほんのりワイルドな顎鬚もさることながら、落ち着いた態度と頼もしい身体付き。そして眼鏡をかけては外す仕草と色気。先生の作品では登場人物の考え方や行動に感動するのが常なのですが、今回はそれに加え二人の組み合わせそのものに萌え散らかしています。大人になろうと一生懸命な波止くんと、独占欲と執着に戸惑う和巳さん(しかも10コも下の可愛いらしい子に!)。二人の性格がよく表れている、相手を思い遣ったヒートの場面にも感動しました。大丈夫かとか大丈夫じゃないとか、ほんとにもうなんて健気なの波止くん!一生大切にされていてほしい。お兄さんとスウさんに混じって、二人の穏やかな日々を見守りたいです。

誰かに「大丈夫ですか」と声を掛ける時、そこにあるのは相手への思いやりと気遣いです。アルファだからとかオメガだからとかではなく、ただ困っている時に手を差し伸べてくれる人。運命のような時間をやり過ごし、時間をかけて作った居場所で好きだと気が付いていく。「同じ船に乗った」二人の、守り守られる関係がとても素敵でした。
早寝電灯先生の描く作品が大好きです。先生の優しくて強い世界が、どうか多くの人に伝わりますように。
いいねしたユーザ38人
レビューをシェアしよう!