このレビューはネタバレを含みます▼
母親から女の目を向けられるって相当きついはず・・「母さんがこわい」性的な目線ひとつでどれだけ環の心が傷を負っていくか想像しただけでぞっとします。未遂なのがかえってリアルですが読んでいくとその地雷を吹き飛ばすくらいの名作だと思いました。
環が性的な行為そのものに対する嫌悪感を抱えてしまっている原因を知った志井が「1年つきあう話終わりにしよ。ここは環が安心できる場所にしたい」って言った言葉で涙腺崩壊。環を助けたい。無表情で環大好き性欲大魔神の志井が色んな意味で本気になった瞬間だと感じました。
そしてさらにその後の展開がもうほんとにすごいなって思うんです。
そのトラウマを認めたうえで2人の関係を安全地帯にしないことを2人で選択する。危うい方へ手を伸ばして「こっち行ってみようよ」ってまた破れたフェンスをくぐろうとする。こう書いてしまうとポエムみたいになっちゃうけど、そんな生易しい温度感じゃないんですよね。
救い救われたいのも本心だけど、そこにはどうあっても環の心も身体も自分のものにしたい志井のずるさや押し込めてた環のリアルな性欲もあって、きれいごとで終わらせない生々しさを感じて衝撃をうけました。この2人なら確かにそうなるかもって想像できるのがほんとすごい。いつか志井が環に受け入れられて「ほらやっぱり大したことなかったね」って笑える日がくることを願わずにいられません。
そして先生の作品特有の2人の独特なちょっと軽くてリアルな会話の雰囲気も大好きです。感動を文字にしたくてすごい重いレビュー書いちゃってますけど、つまりは大好きな名作だと言いたいのです。テーマがテーマなのですらすら書けるお話ではないと思いますが続きは気長に待っていますのでどうか2人を幸せにしてあげてほしいです!