不死身の特攻兵
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不死身の特攻兵

鴻上尚史/東直輝

読まずにはいられなかったテーマ

2025年4月22日
特攻隊のお話、辛くなるのはわかっていても、読まずにはいられなかったテーマ。作品自体は何年も前から存じ上げておりましたが、戦後八十年のこの年にやっと拝読する決心がつきました。

こちらの作品は事実を元にした小説のコミカライズ。陸軍の特攻隊“万朶隊”に所属しながら、何度も死線をかいくぐってきた佐々木さんの若かりし頃の体験談が元になっています。
特攻隊というと彼らが搭乗するのは戦闘機、中でも海軍の零戦のイメージが強い方もたくさんおられると思いますが、陸軍の爆撃機が特攻仕様に改造されたものも存在しました。四式重爆撃機をベースにした“ト号機”や、この作品の主人公である佐々木さんの搭乗機・九九式双発軽爆撃機の改造型がそうです。
当時の実際のモノクロ映像や写真で、それらの特攻仕様機を目にしたことがあります。まさに“棺桶”としてのみ造られた機体。本来の精悍な姿とかけ離れた不気味でグロテスクな外見に、思わずゾッとしたことが記憶に新しいです。
その恐ろしい航空機に乗り込む直前の特攻兵の心情が実にリアル。もし自分が登場人物と同じ状況ならどうだっただろうと考えずにはいられなかった。
戦争は恐ろしい。人の命すらいとも簡単に一発の弾丸にされてしまう。
二度とこのようなことが起こってはいけない。佐々木さんの体験を通し、本当に身につまされる思いがした作品です。
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