ウスズミの果て
」のレビュー

ウスズミの果て

岩宗治生

廃墟の描写と深すぎる物語に感動…!

ネタバレ
2025年5月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 検索でお目にかかった作品。あらすじを見ると普段あまり読まないSF作品のようでしたが、表紙に一目惚れしてしまい拝読。
物語開始より50年前のこと。“結晶病”と呼ばれる不治の病が蔓延し始め、地球上の人類の大半が死滅。その特異な病の原因は、突如出現した異形の存在が撒き散らす瘴気。
そんな中を生きる一人の少女。彼女の任務は異形によって穢れた土地の浄化、そして生存者の捜索であるのだが…。

まずページを開いた瞬間、廃墟・廃墟・廃墟!生命活動を感じない無機質な建造物群の描き込みが素晴らしい。圧倒されました。
この緻密な作画を眺めるだけで結構な時間を割いてしまった。眼福の極みです。
そんな廃墟の一棟で謎の生物クーと暮らす少女・小夜。彼女は“丑三技研機関”の臨時調査員。退廃した世での生存者の捜索・保護、感染力が非常に強い結晶病ウイルスの浄化というハードワークを淡々とこなしています。
なぜ小夜が不治の病を一切恐れず活動できるのか。それは彼女が“永遠の子”であり、研究によって生み出された改造人間であるからなのです。
捜索中に発見した遺体の火葬・埋葬も小夜の仕事の一つ。一面に広がる墓地のシーンで思わず絶句。
そして彼女が調査に訪れた場所で出会う、生身の人間ではないコピー人形やアンドロイドたち。彼らが語る“生き続ける目的”には胸が締め付けられます。
さらに捜索を続けていくうち、やっとのことで生存者の一人を見つけられたのですが…。

荒廃した近未来の描写が圧巻で、当初はある意味それ目当てで読み進めていました。
そんな中で徐々に明らかになっていった小夜の任務や正体、様々な出会い。それが予想以上に深く掘り下げられており、心がゴッソリ抉られたかのよう。あぁ苦しくて切ない…。
SF好きの方や廃墟好きの方にはとにかくオススメ。特別そうではなかった私でも、頭から爪先までどっぷり世界観に浸かってしまいました。
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