鬼は今日も雨を待つ
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鬼は今日も雨を待つ

古澤エノ

梅雨と夏がきたら涙と立夏を想います

ネタバレ
2025年6月8日
このレビューはネタバレを含みます▼ いまこの季節にこの本を読めて良かったです。四季を司るのが神ではなく鬼だという設定が素敵。
夏はとても苦手で毎年冬眠ならぬ夏眠してやり過ごしたいって思うほどだけど、こんなに綺麗な鬼たちが創り出してくれてると思えば夏もちょっと好きになれそう。梅雨に入ったら今涙がいるんだなって思うことにします。

デビュー作ということですが、詳細な部分までこだわっていることが一目でわかる綺麗な作画に惹きつけられました。木々や花の画が特に細かくてすごい。そして鬼たちがとにかく美しい・・立夏だけでなく冬牙や愁も美麗。乎春はかわいい。狐も猫も鳥も大好き・・好きなもの全部入ってた!無条件降伏です。
魂を揺さぶられるような激しい出来事は起きませんが、綺麗な作画と優しいストーリーに満たされてとても美しい絵巻物を見ているよう。

最近の夏が長いのは立夏と涙がずっと一緒にいたいからかな?他の鬼とケンカしてゲリラ豪雨は降らせないでね、と願っておきます。

蛇足ですが・・日本の古来からある色彩や柄が好きで和のデザインの本をよく読むのですが、立夏の着物の柄の鱗紋、古来三角は忌むべきものを表すので、それをあえて文様にして厄払いとしたのが鱗紋。鬼である立夏が着ると人間から見ると意味変わるけど、本来の意味からすると鬼を表すのにとても似合うと思いました。
しかも涙がまだ人間で亡くなる時の立夏の着物は萩や菊の柄。和装は季節を先取りするのでその柄でもうすぐ夏が終わる頃っていうのがわかる。作者さまがあえてその柄にされたのだろうなと思いじわっと感動しました。
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