このレビューはネタバレを含みます▼
小石川先生の新刊がハネていますがまずは既刊再読、滾りすぎて新刊になかなか辿り着けません。これはレビューしないと、ということで一番好きな作品から。
「幸福な王子」の物語をモチーフに、神獣・瑞獣思想や戦時下のエピソード等オリジナル要素を詰め込んだファンタジーBLです。麒麟の末裔の見目麗しい坊ちゃんの美しい自己犠牲と執事乙鳥への利他的な愛のお話…と思いきや、どっこいそれに留まらないんですよねえぇ!!(クソデカ感情アンコントローラブル)
「幸福な王子」の核となる部分の博愛と悲壮の解釈と表現方法が、本作は改変されています。具体的に言うと坊ちゃんの利己的な要素が入ってきます。自傷行為で人の気を引くような、カジュアルに表現すると構ってちゃん。ただその行為はいかにも「道化」的であり実際に助けられた人間もいる。見るからに痛々しいし狂気さえ感じるのに、美しい。
「幸福な王子」自体が無自覚の自己満からの盛大な巻き込み犠牲案件なので、先生の解釈としての原作救済なのかもしれません。少し回りくどくなりましたが、この改変でガッカリする方が減るといいなという希望的観測で敢えて触れています。笑
先生の他作品へのレビューで大人の絵本、大人の童話という表現を見かけますが、ポップで美しい絵柄も相まって成程その通りに思います。BL初心者にお勧めを聞かれたら、小石川先生作品と答えます。