赤紙がきた猫
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赤紙がきた猫

矢野満月

2巻を読む覚悟ができずにいる…

2025年7月7日
戦後八十年の節目の年に出会った作品。タイトルで何となく内容は予想できましたが、まさに…。
戦時中、飼い犬を毛皮のために供出させられたというお話は聞いたことがあります。そして、本作は猫までもがその対象になるという流れ。
二十年近く猫たちと暮らしている自分にはかなりキツいはず…と思いましたが…。祖父母が生きた時代でもある戦争当時については非常に興味があり、詳しく知りたい気持ちが強くて手に取りました。

舞台は太平洋戦争末期。東京生まれの“たまさん”が、縁あって北海道は函館の史郎さんのもとに嫁ぐところからお話は始まります。
第1話冒頭の印象から切なくしんみりした物語と思いきや、まさかのコメディタッチ。良い意味で拍子抜け…。
時折吹き出しそうになりながら、しかし考えさせられるところもしっかりありつつ。意外にもサクサク読み進められました。
身一つで嫁いできたたまさんに対し、姑はもれなく意地悪。旦那さんの史郎さんも素っ気なく、このまま寂しい新婚生活が続いていくのかと。
しかし雪の中、たまさんは思いがけず仔猫を拾うことに。そこから少しずつ、彼女と史郎さんの生活がほんのり温かいものに変わり始めます。

コミカルで可愛らしい絵柄も相まって、読んでいてあまり強く悲痛さを感じさせない、どちらかというと面白おかしく進んでいく物語です。
だからこそ、たまさんや史郎さんや猫のチャペがどうなるのか怖くて、実はまだ2巻には手を伸ばせていません。
知りたい気持ちはあるけれど、悲しい描写があったとしたら耐えられる気がしなくなってきて…。
もし自分が戦時中の人間で、猫を飼っていたとしたら。お国のために猫を供出しろと命令されたら、果たしてどうするだろうか。
ふと思い巡らせてみたものの、考えるだけで辛く、ただただ涙が出てしまった。今の時代に生きていることが、いかに幸せか…。

読みたいけれど、未だ読めていない2巻。しっかり覚悟ができたら、必ず手に取りたい…!
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