このレビューはネタバレを含みます▼
反社の構成員をクビになった男がクリスマスの寒い夜に小さな命を拾う。全78頁。
テーマは命、社会、親と子、葛藤、運命そして愛。
幼少期に足を怪我して後遺症のハンデを負いながら社会の片隅で生活をする星野藍。拾った赤子は生後6か月の女の子。彼は赤子にゆう(優)と名をつけて育て始める。彼女は盲目のハンデを持っていた。
藍はけっしていい人でも強い人でもなかった。父親の暴力に母親との別離が彼の人格を形成している。ゆうの夜泣きで自分は寝不足の日々、解雇や倒産の憂き目と苦しい生活を経験しながら日々を積み重ねる。それでも目が見えないゆうは藍の好物がプリンだと知っているし、得意な歌で楽しませることだってできる。短いけれど幸せな時間を共有するふたり。
この作品をよむと親子の愛とは何か、命が生まれてくる意味が胸にせまる。物語の冒頭、孤独で自由な藍の生活に果たして幸せはあっただろうか。そして中盤から終盤にかけては愛の本質を問いかけられる展開がある。どんなに時間がすぎてもここには優しい愛が描かれている。