このレビューはネタバレを含みます▼
荒削りな初期作品にこそ、作者の魂は宿ると思ってる。
【人魚のムニエル】
結局愛する人が苦しむより自分が苦しむ方がよっぽど楽。愛する人を作ることは、新たな苦しみを作ること。それでも人は人を愛さずにはいられない。憎めないお父さんが作品の肝です。
【ロボットのいる家】
純粋な人ほどロボットに傾倒してしまうのではないだろうか。ロボットが精巧過ぎると錯覚してしまう人間の脳の脆さ、危うさよ。
【ウワサ鳥】
人は予言を気にしすぎるきらいがある。なんなら予言に行動を寄せてしまうきらいもある。
【デリバリー地獄】
これが一番好きでした。ひょっとして人の良心を擬人化したものを「鬼」と呼ぶのかもしれない。
全8編の短編集。いずれも人間の深層心理を表に出しながらさらりと読ませます。でもさらりとしてるのに読後の重さは重量級。その落差にしばし呆然としてしまう。