マリッジブルーの僕たちは【コミックス版】
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マリッジブルーの僕たちは【コミックス版】

夏井数

保守と革新の初恋物語

ネタバレ
2025年8月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 義兄弟のストーリー。始まりの海中シーンが印象的で購入。 280頁。 初恋、オメガバース、リバ、魂の番の配合でできた作品。星☆4.0

主人公は少年期に同い年で義兄弟になった瀬名孝(兄)と勉(弟)だ。二人とも α(アルファ)で体格も才能も秀でているが、趣は違う。孝はソバカスの幼顔、対して勉は整った顔立ちのイケメンだ。孝は堅実なサラリーマン、勉はミュージシャンで自由人と対照的。孝はオメガを幸せにすることがアルファの価値だと信じている。勉は既存の価値観にはこだわらず、自分を信じている。そんな勉に「魂の番」が現れた。そのΩ(オメガ)にはΩの恋人が居ることから展開が進んでいく。

保守的な考えの孝は次々と恋をして、失恋を繰り返していた。そんな彼が癒しを求めるのは海の中とドライブ中の音楽。勉はワガママで自由な性格なのに愛一筋だった。バース性であっさり捨てられても、「魂の番」が現れても、愛を手放すことはなかった。いくらでもできる恋が愛の渇きのまえでは意味をなさないとは、なんとも切ない。

オメガバーズの設定に既存の価値観が混ざり合って孝の人格はある。最後まで読むと伏線は回収されて視界が開ける部分と、見えない部分の景色が広がる。例えば、孝を慰める音楽はいつも勉が作った音だ。しかし、何故その音が好きなのかは語られない。
また、勉は孝の恋路を邪魔せずにはいられない。自分以外の恋人ができて離れてしまう事への恐れは自分なのか孝なのかは語られない。語られないのは答えがひとつではないからだと思うのだが、どうだろう。
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