牢獄の王子と騎士の密約
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牢獄の王子と騎士の密約

案丸

隻眼と伸びた髪の革命

ネタバレ
2025年8月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ シンバ王国再建物語。第二王子・ユリウスと美形騎士・フェルノの革命BL。牢獄から晴れ舞台に立つ王子の活躍と犠牲の上に立つ革命家の人生 246頁

物語は国王の庶子・ユリウスと見習い兵士のフェルノが地下牢で会い、国の制度と国民をも変えていく展開になっている。
ユリウス齢7歳から足掛け16年の再建までの道のり。最初のチャンスは15歳。暗い牢より光の下に立ったユリウスは権力だけに頼らず、じっくり時間をかけて制度を築き上げる冷静な策略家だった。ユリウスは地下で忍耐を学び、強さを蓄えていた。彼を支えていく美貌の騎士フェルノは家族を亡くし、生きる気力をない田舎者。地下牢で人生をかける人に気づいて、武力での強さを求めていく。

ユリウスの少年期から青年に成長する過程も良かった。特に戴冠式の場面は皇太子という言葉がピッタリの姿だ。しかもここでのフェルノとのやりとりが痺れる。相手の本音が鮮明に際立つ構成が素晴らしい。そしてフェルノは願掛けをしているのか、髪がドンドン伸びていく。長髪の美人が長剣で格闘する姿はベルばらのオスカルを彷彿とさせる。ラストは革命家の悲哀が潜んでいる。タイトルの「牢獄」がエンドロールに映し出されるような締めくくり。

蛇足で、二人のラブに白抜きが無いことに気が付いた。あれが無いと集中力が途切れない!ものすごい清々しい気分で読了。作者の画力と憎い演出に感服する作品。
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