このレビューはネタバレを含みます▼
今まで何度も目にしていながら、何故もっと早く読まなかったのか私は。
今胸がぎゅうぎゅうに苦しくて、頬は涙の乾いた跡でカピカピに引き攣っていて、そんな状態でレビュー書いてます。
序盤は何度も目にした試し読み通り、高校生にもなってこの子らは何しとるねんと笑いから入りました。でも夕希の無邪気さにはたぶん私この頃からやられていました。いつも通りの時間に現れない晃をポツンとしゃがみながら待っているところとか、晃を見つけた時の満面の笑顔とか、素直で健気で…最初に恋に落ちた晃の気持ちが分かり過ぎる。
2人は共に歳を取っていきます。白線上での出会いが17歳、最後は夕希82歳です(!)
これだけの年月が経っているんです。そりゃ2人の間にも色々ありました。3話では夕希が可哀想過ぎて「晃っ!テメッ…ざけんなお前っ…!」とこれ以上は書けないような言葉遣いで罵倒した時もありました。
人を愛する気持ちってこんなにも複雑で難しいものなんだっけ。
そして歳を取るということのリアル。
そりゃ私だってもう若くないですから日々漠然と考えているし憂鬱な気分になったりもします。同時に若さって本当に素晴らしいよなと、自分にも確かにあった学生時代を2人に重ね、憧れにも似た気持ちで思い出したりしていました。
人は同時に死ねないからどちらかが残されてしまう。この2人の晩年期もやはり読んでいて辛かったのだけど、最後病院の廊下の白線を高校生に戻った夕希が跳ねるように駆けていくところ、いやその直前の笑顔のアップで私の涙腺は最後の崩壊をみせました。皺だらけで酸素マスクを使っていた絵から一転、生気漲る夕希の、あの好奇心いっぱいの笑顔が懐かしくて眩しくてたまらなかった。私は天国の存在を信じていないつまらない人間だけど、もし本当にこんな再会が叶うのなら死ぬのが少し怖くなくなる。あそうかだから信仰があるのか。確かに救われた気持ちになるわ。
読み始めた時はこんな壮大なストーリーが待っているとは思いませんでした。白線踏み外したらサメが〜氷剣が〜とか言ってる高校生がBLしたとしても一冊もつのかなんて失礼な心配までしていたけど、今は逆にこれだけの話をよくぞ一冊にまとめて下さったものだと感服しきり。
これはちょっとほんとにすごかった(涙腺とともに語彙まで崩壊)
この初読み作家様の名を改めて確認。
出会いに深く感謝します。