このレビューはネタバレを含みます▼
壁に突き出た左手と新社会人のラブコメBL 95頁 星☆4.0 前から「壁の手」の奇妙さに引っかかっていた作品。果たして手にラブができるのか。
中土涼(りょう)は研修のため寮暮らしを始めた新入社員。ところがその部屋の壁には左手が生えていた。不思議なことに涼以外には見えず、写真にも写らない。最初こそ気味悪がっていたが、「山田さとし、26歳、おとめ座」と指談で会話ができると、人間味が増して共同生活は日常に変化していく。
この物語の面白さは、左手と”明るいおしゃべり”で同居が始まること。20年前に建物に取り残された事情を語るが悲壮感はない。それどころか朝は起こすし、毎日の会話で楽しくなっていく。涼はお酒を飲むと、変なテンションになってしまうが憎めない若者。なれない社会人生活、目まぐるしい日々、しかし疲れて帰っても部屋では大きな左手が待ってくれている。
なんとも不思議な展開をみせる物語。ふと、顔も声もない相手に惹かれるのかと疑問がよぎる。けれども見た目だけが好きになる要素だろうか。握手やハグで手が言葉にならない感情を伝える、そのぬくもりは誰もが知っている。じゃぁトキメキがどこから来るのか。
ホラーではない、妖しい壁の手と日常をすごしたハートフルコメディ。20年の時を経て左手はようやく壁から出る。恋をするために。
※読み放題なら自由に読める。ちなみに内容だけならpix〇vでも---そして「大好き 山田さん」へと続いていく。