このレビューはネタバレを含みます▼
訳ありげな聖職者と有能な警部の事件BL 244頁 星☆4.0 「真夜中ドライバーズハイ」の平は都心を離れ乱平と暮らしている。眼光鋭い澤尾浩司(さわおこうじ)警部が再び登場。以外な展開が待っていた。
秋が深まる東京。汚職事件が行き詰まりをみせる中、捜査線上にうかんできた参考人の神父・アバ。銀髪碧眼、日本在住26年。52歳。取調室の聴取にも終始落ち着いて、かなりあやしい雰囲気。そんなアバは澤尾に犯人の情報提供の代わりに”ひと時の愛”を過ごす条件を出した。契約のキスで交渉は成立。だが澤尾は不感症持ちだった。
ドライバーズハイの澤尾は優秀な警察官。その彼をアバは翻弄していく。精悍な顔立ち、柔和な物腰に服の脱がし方まで大人の余裕が見える。この男、来日するまでの経歴が不明だ。身体の紋もんや意味あり気な視線に釘付けになる。なんなんだ、これも伏線か?物語の鍵を握る危険な微笑みの聖職者。
しかも澤尾の機能停止の体と抑圧した心を解放させる。緊張を解き、「人の温もりはいいものだね」と胸にほほをよせ、ゆっくり体温をあわせていくテクニックの上手さ。仕事出来堅物が気持ちよさに感じていく様が丁寧に描かれている。澤尾がトロけて赤面する堕ち具合に思わず拍手がでた。
汚職事件は政界まで広がり、アバを巻き込んだまま調書の量がふくらんでいく。事件に関与が認められたら起訴は免れない。教会の上でどんよりとした雲から小さな雪が降り始めた。クリスマスが目前に迫っている。
アバ・J・グレイはダークな雰囲気をまとったまま終了。魅惑的な眼差しで「楽しみは取っておいた方がいいだろう?」と言っている。作者さまの脳内で次の出待ちをしているかもしれない。