兄弟失格[ばら売り]
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兄弟失格[ばら売り]

りんごの実

BLの括りだけにするのは勿体ない兄弟愛

ネタバレ
2025年11月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 赤ん坊だったヤヒロを残して家を出た無責任な母親や、お金にだらしなく親の自覚のない父親に代わって、兄のキハチは弟ヤヒロを慈しんで育ててきた

いつも護ってくれる兄にヤヒロが特別な感情を抱くことは自然なことで、ヤヒロが高2の多感な思春期に兄が出演するゲイビを観てからは 兄への親愛の情に肉欲が結びつき、ヤヒロは兄を求めるようになる

最初の2回、キハチがヤヒロに口でしてやった時は、弟の単なる性欲処理のつもりでキハチには照れもあった。キハチの意識が変わったのは、ヤヒロが肉体的にはもう子供ではないと知った時だ。
キハチは初めて、性的な対象として大人の肉体のヤヒロを意識し、寝たフリをしている時にキスをされてヤヒロへの愛情を自覚する。

そして、とうとう二人は一線を越えてしまう(ヤヒロに強く突かれてキハチが思わず大きな声を上げてしまうあたり、生々し過ぎ 笑)

実の兄弟だからこそキハチは苦しみ、ヤヒロの将来だけを想って断腸の思いで家を出る

「りんごの実」先生は、二人が一線を越えたあたりから泣きながら描いたそうだが、兄弟(主にキハチ)に感情移入して こちらも胸が苦しくなる

キハチがゲイビに出る経緯も自然で、短期間で学資資金を稼ぐため。そこには迷いや後悔はない(ブレないキハチ、時にクスッと笑えるシーンもあり)

SNSで「りんごの実」先生は ヤヒロにはまだ伸びしろがある、と仰っていたので、物語はまだまだ続くと思われる

おそらく、ヤヒロ名義の貯金が一気になくなって、その後、ゲイビの制作元から大金が入るようになったお金の流れにヤヒロが気づけば、キハチがゲイビに出た事情や自分への深い愛情をヤヒロが知ることになるんだろうなぁ

兄キハチの庇護の下、愛情を受ける一方だった弟ヤヒロが今後どう変わっていくのか、二人の関係がどうなるのか、これからもこの兄弟を追いかけて 結末を見届けたい

尚、コミックの表紙で、伏し目がちから遠くを見る兄の目線の動きなど、心情を細かく表現されていてキハチの服の色にも意味があるそうだが、色々想像して読み解くのも楽しい

義兄弟やご都合主義の兄弟モノとは一線を画す、真正面から兄弟を描いた唯一無二の作品です
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