ブルーマンデイ スペクター【合冊版(シーモア限定描き下ろし付)】
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ブルーマンデイ スペクター【合冊版(シーモア限定描き下ろし付)】

瀧本羊子

導きの夜鳴鶯は、誰か

ネタバレ
2025年11月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ 廃墟の図書館に残された恋慕が暮れようとしている。173頁 星☆4.2 寄宿生活と青年たち。出会い、友情、秘密の楽園。オカルトとホラーとファンタジーが織り込まれた見事なストーリー

格式ある寄宿学校は良家の子息が集まる場所。ルカは移民の混血児で虐めの標的になっていた。負けず嫌いな性格から学校では目立つ存在。同室のイアンは家柄、成績、素行の揃った、いつもルカを気遣ってくれる紳士な友人。ある月曜日にルカは立ち入り禁止の建物の鍵を手に入れる。取壊しが決まっている丘の上図書館でナイチンゲールが導いた先に、不思議な魅力をもつ卒業生オリバーが立っていた。彼はこの世にはなく、魂が図書館にとどまっていた。

この物語は深くて濃い友情が底辺にある。イアンはルカに恋をしているが、それと同じくらい大事な友人。だから見えないオリバーの行く末まで案じてしまう。ルカはイアンの風評を心配する。相手をおもって行動する姿が胸に沁みてくる

さて、終盤ルカを謎解きの世界へ案内するナイチンゲール。ルカに語り掛ける夜鳴鶯は誰なのかが気になった。最初は大人になったオリバーと思った(事の顛末を知っているので)しかし鳥の別名は墓場鳥、人の死を知らせるいわれもある。オリバーの死を誰に伝えにいったのか。それから鳥はオリバーの友として傍で慰めている。
ここは深読みだが。想い人テオが前髪の奥から見せた瞳がすべてを理解しているような。なんだかとても温かいのに切なかった。

夕暮れの建物に小夜啼鳥が甘くさえずっている。余韻がひろがる作品。

※余談だが、ナイチンゲールは墓場鳥・夜鳴鶯・小夜啼鳥(さよなきどり)の別名が多い。日本には生息していない。
ラブはキスシーンのみ、枠外でちょっといたしているかも。
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