このレビューはネタバレを含みます▼
振り上げられた手に叩かれる肌。
それが紅く染まる時、宿る感情は何か。
時代は昭和あたりだろうか、田舎のとある一族の物語。
読んではいけない本をこっそり開いた感覚で、障子を開けた先に見えた世界にゾクゾクしてしまった。
支配する者と支配される者の悦び。
一見、龍彦が支配される者のように見えるが、半端な支配では彼を満たすことができず、彼の欲は無意識のうちに絶対的な支配者であった父を破滅の道に追いやってしまっている。
龍蔵も龍彦のために家に戻っているし…真の支配者は誰なのだろう。
龍彦、恐るべし。
龍蔵の堂々とした立ち振舞も素晴らしかったが、やはりMVPは龍彦だな。
くるくると変わる表情や、行動が突き抜けていて最高であった。
奥田先生の描く、昭和日本の影のような世界観がとてもいい。
ダーク路線をもっと読みたい。