三文小説集 瀬川環作品集
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三文小説集 瀬川環作品集

瀬川環

言葉をもたない犬と言葉をささえた兄

ネタバレ
2025年11月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ たらふく抱えたポイントで、いい気になって買った1冊。183頁 女性ジャンル

「野犬夜曲シリーズ」と「僕は兄になりたかった」が収録。
「野犬夜曲」→「野犬狂想曲」→「野犬追想曲」は孤独な青年・橘(たちばな)と書くことを生きがいにしている綾川(あやかわ)の物語。幼少期に父を亡くし、親戚中で厄介者扱いを受けた橘。やがて怒りや寂しさを暴力で表現するようになる。ある夏の酒場で美しい女性と出会う。甘いひとときで終わるはずが、彼女が小説家だったことで橘の人生が変化していく。野犬シリーズは綾川が2枚も3枚も上手だ。暴力に微動だにしない強さがある。暴走する感情に丁寧な言葉で向き合うシーンは秀逸。そして男は次第に恋に目覚める。だが恋はやっかいなカタチへ育ち始めた。橘のギラギラした眼差しと寂しげな色気が魅力的だった。

「僕は兄になりたかった」は野犬シリーズがヒリヒリする恋ならこちらは情愛。優しい兄と人と話すことが苦手で引きこもりの弟。ただ文章を書くことが上手かった弟を兄が一緒に暮らしながら応援する話。40頁ほど。兄弟がお互いをリスペクトしているのが、伝わってくる良作。

※ pix〇ⅴやNO-トにも作品が掲載されている。お時間あるときにでも。
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