このレビューはネタバレを含みます▼
秀良子先生は漫画家であり詩人でもあると思います。以前先生の他作品のレビューで「きっとこれまでの経験からたくさん気付きを得てそれをペンに載せて〜」みたいなことを書いたのですが、この感性は生まれ持ったものではないかと最近思い始めました。努力とかでは埋められない次元の違うもの。一言で言うと天才ってやつです。
後回しになっていた本作を読んだらもうそうとしか思えなくなりました。言葉選びや間が他と明らかに一線を画している。でもこれは好みの問題でもあり、私にはドンピシャだったということです。
表紙は笑えますよね、こんな漫画みたいな貧乏て!って漫画だったわ、みたいな。
ツギハギだらけの学ランを着る三崎君と学校理事長の孫明治君。何かと三崎に突っかかる明治だけど実は三崎のことが「好きよ大好きよ」。
明治祖父は戦時下を三崎祖父と生き抜いた。そして三崎祖父のことが「好きよ大好きよ」だった。敗戦後の虚しさの中で、三崎祖父が文学青年の明治祖父になら伝わると解っていた上で告げたあの言葉。明治祖父、本当は胸が高鳴ったろうな。でも敗戦を受け未来に希望を託しこどもを作ると言った彼を見守ろうと決めた。その結果恋心を引き摺ることになったが三崎にも自分の孫にも会えたし、祖父生き写しの三崎を孫と楽しく取り合っている(笑)もちろんガチではないけど孫の告白を聞いた時の、自分には出来なかったという感心と羨望が混ざった涙が沁みた。
そして私も作中明治から感銘を受けたシーンが2つあって、それは高校やめて働くと言った三崎に思わず学費を肩代わりしようとしたけど言葉を止めた時と、三崎に好きだと告げた後の「何もできないけど」というセリフ。三崎のプライドを慮っているようにも取れるし、告白後なんて自分が金持ちであること忘れてるようにも見える(笑)それを振りかざすような男だったら、その水3本じゃなくて全部買い占めてドヤッですよ。そんな発想すらなくてどうしたら三崎が喜んでくれるか必死に考えている。バラの花束は結果として高価なものだけどそこまでの過程を考えたら好感しかない。
そうかこの後10年待ったのか。でもおじいちゃんは恋心抱えて60年だから。いや70年だ。よくぞご健在でいてくれた。でも三崎祖父の「あいつおっせーな」には笑った。
読むの遅過ぎた私が言うのもなんだけど作家買いで間違いないです。もう素晴らしいとしか言いようのない一冊。