オムニバス形式のエピソードや登場人物の描写の解像度が高く、それでいて舞台設定自体は分かりやすいのでサクサク読めるので気づけば最新刊まで揃えていました。
痛快な逆転劇や印象的なオチを期待して読むというよりは、各エピソードの登場人物がどの
ように生きて最後を迎えたかというドキュメンタリーを見て考える、楽しむという雰囲気の作品です。
素敵な人生を送った人、報われない人生を送った人、それぞれに魅力があるので程よく感情を動かされます。繰り返し読みたくなるものもあれば、しばらく読めないと感じるものもあり、総じて独特な余韻が癖になります。
エピソードの幕間で描かれる主要人物たちによるヒューマンドラマも魅力で、精神的に欠落している人、葛藤を続けている人、確固とした価値観の持ち主、サイコな人etc…それぞれにどんな過去があったんだろうと想像して読んだり、これからどんな成長を遂げていくのか考えたりできるのも先が気になるポイント。
また「ジェンダー」「ネット炎上」「宗教」等、現代の日本社会で何かと話題になるテーマも一部取り扱っているのですが、思想的には比較的フラットに描かれているので、そういった描写に過敏な人もストレスなく読めると思います。人によっては物足りないかもしれませんが、個人的には良いバランスだと思いました。
ただし作品のテーマがテーマなので、グロテスクなシーンがあったり、登場人物の生い立ちに自分を重ねてしまったりと、そういった面で苦手に感じる人はいるかもしれません。
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