本を読んでいる時、私の頭の中で勝手に背景のようなイメージが流れているのですが、この作品はずっと、暗くじめついた哀しみが、けれど静かに降り積もるようでした。一度目の結婚、長い月日を重ね、静かな幸せと呼べるものに到達するのかと思いきや、衝撃の結末。そして悲惨な日々を淡々と生き抜き、とうとう逃げ出すわけですが。それにしても、最後の最後でようやくいろいろ明かされるけれど、その中身は驚きです。あまりにもゲルトは感情を隠しすぎでしょう。もっと早くにほんの少しでも、マリーア姫に気持ちを伝えていたら、こうはならなかったのに。再婚相手の愛人の想いも驚きます。予想もしませんでした。不幸ばかりの人生だった2人が、再び巡り合い、幸せと思える生活を掴めてよかった。ルカーシュのように生きる意味を見失い、後悔と恨みとあらゆる負の感情に囚われて生きていても、再びささやかな、けれど心の底から望む幸せな生き様を見出せたことは、すべての人への希望です。本当に心に沁みる作品です、ありがとうございました。