音楽を漫画にする時、作者は音楽をかけることができないため、あるあると笑い、恋模様で作品を紡ぐ。
題材にするのは音楽だが、本当のテーマは別にある、と言うふうに。
しかしながら私はそれを否定したい。
私は音楽の中でも壁が高く感じられてしまっているクラシックの敷居を下げる事を普段から強く念じている。
ロックの要素と好まれ方はバロック時代に既にあった。
つまり逆説的に、現代の誰もがクラシックを受容出来る要素を持ち合わせているのだ。
それを体現したのが、本作のヒロインである。
全くの素人が強豪校に入り、同じ活動を続ける事で感じる劣等感、焦燥感は計り知れないものだろう。
だが、本当に恐ろしいのは経験者である。
できるというある程度の自信を持って参加した団体が化け物の集まりだった、という構図は、プロ野球選手が名門校に入った時のことを回想する際によく見られる。
こちらの葛藤は、もう一人のヒロインの中で芽生えている。
現在の段階で、ストーリー進行は若干遅滞傾向にある。
これは世代交代に伴うキャラクターの顔出しが多分に含まれているからであるが、少々冗長気味になっているような印象を受ける。
また、女性の方が多いであろうという一般的なイメージはその通りであり、実態としてオーケストラは女尊男卑的なグループが多い。
ゆえにカップル成立はほとんどないのだが、本作はどうか。
クラシック強豪校の活動という新しい試みは非常に今後の展開に期待したいところであるが、痴情のもつれによるストーリーの遅延だけはあってくれるなと願うほかない。