3つのお話がありました。一冊に三作と聞くと、短編集的な物足りなさがある不安がありますが、そんな心配は全く無用でした。どの作品も少ない会話や状況から端的に多くのことが理解できるので、ページ数と読み応えが反比例するんです。
表題作は、始まってたった2・3ページというあまり見ない速さでアクションがあって、先のワクワク感とか期待感が大いに高まって良かったです。基本的に絵が丁寧で綺麗なので、対比として所々に出てくる魂が抜けたような顔から呆然とした様子が伝わってきて面白かったです。
表題作以外の二作品も真面目だけど鈍かったり、いい奴だけど無意識に人を傷つける鈍さだったりと、愛すべき鈍攻め達に振り回される受け君達の大変さに、少し切なくなりつつも楽しめました。先生の作品は、微妙な行き違いからすれ違う二人や何とも言えない雰囲気がしっかり伝わって来て浸れるので大好きです。すれ違いシチュも、よくあるパターンでないのが凄いと思います。