自分も車椅子の家族がいた。紙書籍で読んだ時は、他人行儀な漫画としか思わなかった。電子書籍で読むと世界観に浸かれる気がする。
インテリア会社で働く川奈つぐみは、高校時代に片想いしていた鮎川樹と再会。樹は大学時代の事故で、車いすで生活する建築士になっていた。読み切りとして描かれた作品が、2014年から『Kiss』で連載され、ドラマ化と映画化もされた。
紙書籍で一番印象に残ったのは、障害のある息子を持つ親と、障害のある男性と付き合う娘を持つ親の価値観の違い。どの立場にいて、どういった経験をしたのかによって、人の考え方は形作られていく。それがハッキリ描かれていて興味深かった。
電子書籍で一番印象に残っているのは、樹の褥瘡(じょくそう)のシーン。車いす生活で下半身の感覚がなく、背中の傷を見たつぐみ。読者にも「恋愛」ではなく「生活」の現実を意識させる瞬間だったと思う。
障害が感動の為だけに描かれたものではなく、恋をしながら現実に向き合う二人の物語として描かれている。
読む人の立場や経験によって、受け止め方は変わる作品だと思う。他の作品同様、分かったフリや理解したつもりになるのは怖い。だけど自分の見方は少し変わったと思う。
ちなみに樹のヘルパーをする長沢は、最初はあまり好感が持てなかった。ユキの結婚式あたりから見方が変わった。
どれだけ尽くしても恋愛対象として見てもらえないどころか、面倒を見てきた相手が可愛い女の子と付き合い始めたんだから、それはイライラするかもしれない。面倒見の良さそうな年上のおばさんと付き合い始めてもイライラする。長沢も離婚したばかりだったことも気持ちを複雑にしてきたかも。
仕事だからやっているだけなのに好意を持たれる人もいる。当たり前のように受け取られて、どれだけ関わっても相手の人生に深く入り込むことができない人もいる。
幼稚園の先生をしている知人は「仲良くなっても忘れられていく〜」って酒を飲んで泣いてたし、芸能関係のスタッフをしてた知人は「名前を覚えてもらっても恋愛対象になるわけじゃない」って愚痴ってたし、水商売をしてる知人は「仕事だから笑ってるのに好きだと勘違いされる」って言ってた。職業に限らず、学校や職場でも似たようなことはありそう。尽くしても恋愛対象としては見てもらえない。長沢はそういうタイプの人かな、と思った。