前作「窮鼠~」では、結ばれたようでいて、恭一は今ヶ瀬という人間をちゃんと見ているのか、よくわからないままでしたが、ここに来てようやく愛情が見え始めました。そして普通の男前さとは違う、けれどとても恭一らしい形の誠実さを見せてくれました。今ヶ瀬がぐずぐずになっちゃうのも悪くなかったし、たまきも良かったです。
ただ、どうしても残念なことが2点。
1点は、文章量が多すぎること。文章が多い漫画それ自体がすべて悪いとは思いません。実際、このシリーズにも心に刺さる言葉はたくさんありました。ただ今作では、「そこは読者の解釈に委ねて欲しいな……」とか、「いやそれ文字で説明されなくても読み取れますから……」というところまで、文字文字文字で書き尽くされてしまって、萎えることがしばしば。
もう1点、押したり引いたりの繰り返しが多すぎること。悩み迷い揺れる人の心のリアル……はいいけど、前作から合わせると一体何回やってるの、と。
作者さんの訴えたいことがぎっしりずっしり詰まっていて、読む人によっては大満足の一作でしょうが、個人的には、もう少し行間とか余白とか余韻とかを楽しませて欲しいんです。いや、そういう場面もあったけど、それを掻き消すほどの情報量に正直疲れてしまって、また読み返したいとは思うけどなかなか手が出ない……ということで、★4寄りの3です。