悪役令嬢と聖女様の構図なのですが、少しひねられた作品です。ヒロイン(公爵令嬢エマニュエル)は派閥争いで負け、誤った世論にも抗いきれず、「女神のいとし子」を選んだ王太子から婚約破棄されます。しかし内情を正しく理解している関係者達は、いがみ合いません。ヒロイン、王太子、女神のいとし子は仲良しなままです。
世論を収める為にヒロインは国一番の醜男(辺境伯ルース)に嫁ぐことになります。この辺境伯は色素が薄い、銀色の髪と瞳。色素が薄いというのは魔力が弱い事でもあり、この世界では忌避される条件になっています。
対してヒロインは髪も瞳も黒く、魔力も強い、最も美しいとされる条件を備えています。辺境伯は自分の容姿が皆に避けられる事に慣れきっており、ヒロインとの婚姻も、時間をかけた末に逃げ切られると予測しており、順調に進む婚姻話を信じきれません。
ヒロインは転生者なので眉目秀麗な辺境伯にデレデレなのですが、ちっとも伝わらなくて、そのすれ違いが可笑しい。
辺境伯は色素が薄いだけで、キラッキラの貴公子、魔力の弱さを補ってあまりある剣技、勇敢で努力家、家柄に財力、かなりな高条件なのですが、色素の薄さはすべての長所を打ち消す強烈なマイナス威力。世間からの不当な評価を幼少期から浴びていた為、ヒロインの好意を素直に受け入れません。読者もモヤモヤさせられます。頑なになり過ぎで、ヒロイン挫けないか心配になってしまいます。早く素直に受け入れて、甘々シーンにして下さい…途中で何度も思ってしまいました。
読者としても挫けかけた時に、事件が起こります。それがきっかけで、辺境伯が自分の頑なさを顧みてくれるようになります。
辺境伯、本当に素敵なのですが、正しく評価されなくて不憫。スタイルもとても良いし、腕っぷしも強く、それでいて性格は潔い。外面も内面も素晴らしい。
小説版では、ヒロインのアプローチも、辺境伯の心理描写も、行儀正しい…というかちょっと控え目。もっと苦しい葛藤や、逆に絶頂の喜びなど、恋の醍醐味を掘り下げて貰いたかった…コミック版に期待したいです。