最初、コミックを読んで、ヘンドリックのあまりな所業に、先が気になり小説版も読みました。それで結末まで知っているのですが、改めて絵で見ると「人でなし」ぶりがより伝わり(憎々しげな表情とか)、イライラ感が半端ない。そのあまりにためらいなく堂々とした無慈悲ぶりに、むしろ感心しちゃいそうです。どうしてそこまで自分に疑問を持たないのかと。
終始、申し開きが出来ない所業なのですが、ヘンドリックは「人の感情の機微が分からない」という欠点があり、生きづらさを抱える人物でもありました。ヒロインの一度目の人生でも、二度目の人生でも、ヘンドリックは非業の最期を迎えます。これが自業自得だよと嘲笑えないのが、この作品の奥深さ。不器用で幸薄いヘンドリックは影の主人公だと、個人的には思えました。
ただヘンドリックの生きづらさは、彼の都合であり、落ち度のないヒロインには苛烈過ぎます。一度目の人生から学んだヒロインは、同じ道は歩むまいと、自衛策を講じます。自分への愛のない旦那に囚われるあまり、視野が狭くなり判断を誤っていたと反省し、周りの力を借りて、賢く立ち回ります。義理の父母からも大切にされ、特にヘンドリックの実弟キンバリーの温情に救われます。
実弟キンバリーは、能力のずば抜けたヘンドリックには、敵いませんでしたし、次男という立場もわきまえて、節度ある補佐を続けます。実直で誠実、何より思いやりがあり温かい。義姉に同情を越えた感情があるのは明らかで、「兄でなく自分ならば、貴女を幸せにしてあげられるのに。」という秘めた想いが分かるので、ジリジリと焼かれるような切なさを覚えさせられます。
何れにしても、感情を揺り動かされるので、読むと軽い疲労を感じます。つまりそれだけの力がある大作という事です。絵も綺麗だしコミック版の結末までも楽しみです。