この漫画を初めて知ったのは大学生のときで、当時はおしゃれな漫画だと思ってたから表紙詐欺だとちょっと思ってたのを思い出します。家を買うどころか、自分の生活費を自分で賄うことすらできない当時の私には、空気感は好きだけど真面目な漫画だなという印象が強かったです。社会人になり、転職や長く付き合った恋人との別れや些細な病気やら仲の良い友人の結婚出産やら、誰もが経験することを一通り経験した後、30を過ぎて手のひらに残っているものの不確かさ、心許なさを知った時、思い出したのはこの漫画でした。いつのまにか沼ちゃんより歳を取り、彼女が26歳年収260万円で頭金を貯めるのにどれだけ苦労し、1人を噛み締めてきたかかが、今度はわかるようになりました。そして他の登場人物のことも、不動産や生活を共通のテーマにするからこそ伝えられるものがあるのだとわかりました。どんな生き方をしていても、人と比べなくても、よろけてしまいそうな日が誰にだってあって、1人で自分の足で踏ん張って毎日を重ねなければなりません。今では私にもそれができるようになってきました。それでも心細くなったら、この漫画を読みにきます。頑張って進む沼ちゃんがきっとこの世のどこかにいるだろうと思い、私にだって頑張れるさと思うと、少しだけよっしゃ!という気持ちになります。すれ違うだけの人のすべての人生を覗き見ることはできないけれど、きっと私たちの相似形がどこかにあって、みんな頑張ってるんだって思うようにしています。東京に行くときは、夜着の飛行機で羽田に降り、東京モノレールに乗るのが好きです。天王洲アイルから浜松町あたり、窓から目と鼻の先にある高層マンションのキラキラ光る窓を見るのが何よりも楽しいです。私の人生にあんな場所に住むような出来事はこの先もないだろうけれど、あの灯りの一つ一つがどうか誰かの幸福な暮らしでありますようにといつも思います。