Season
」のレビュー

Season

麻生ミツ晃

名作に出会えました。

ネタバレ
2021年8月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者様買いです。これは、胸に刺さる素晴らしい作品。心を鷲掴みにして、捕らえて離されない余韻がすごいです。

少し古い時代背景で、呉服屋の跡取りだった東と、元使用人だった松岡の切なくも美しい恋物語です。巡る季節に、二人の想いをのせて幸せにたどり着くまでの過程が、とても丁寧に描かれています。作者様が「かかる手間を惜しまない恋」と言われたように、愛する者の為なら何でもしようという深い想いを抱える男の一途な愛です。それは、自分の手を汚してまでも守り通したい、固く心に誓った松岡なら、東の為なら最悪の事までもしてしまいそうな盲目の愛とも言えそうなほど。松岡にそこまでの感情を抱かせた東との思い出は、小さな東の純粋な優しさが、辛い使用人の扱いにどれほど救われた事だったのでしょう。それだけが松岡にとっての生きる支えだったからこそ、愛して止まない想いは心にじんわり響きます。
東にとっても、困窮して病弱な母親と二人の心細さの中、松岡の支えは少年だった東が恋をするには、すごく自然な事だと思います。
松岡に裏の顔があったとしても、東にとっては目の前の優しさが全てであるだろうし、「松岡の価値を決めるのは僕」と言いきった東がとてもカッコ良かったです。
季節が巡るように、二人の時間も離れては寄り添いながら流れて、初めて想いが重なった時、何があっても離れる事はないだろうなと、涙が溢れて来ました。二人で見る移り行く景色は、きっと美しいに違いありませんね。
読み終えた後の、幸福感はたまりません。
麻生先生の作品はまだ3作目ですが、こんなに心を揺さぶられる作品がまだまだありそうで、楽しみです。素敵な作品をありがとうございました。
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