無慈悲に暴かれる“秘密”を、守り抜けるか





時は2060年。「第九」と呼ばれる科学警察研究所の新人・青木が、組織を率いる美貌の警視正・薪(まき)や同僚と信頼を築きつつ事件捜査に奮闘する様を軸に本編が進みます。
人間の底知れない心の闇や業が産み出す陰惨な殺人事件。恐るべきは、被害者の脳の生前の記憶を見た者は、犯人しか知り得ないはずの殺人行為の詳細な手段や残酷なプロセスをただ「見る」だけでなく、今まさに殺されんとしている被害者が死の淵で感じる恐怖や絶望をもありのまま追体験することになる事実。
そして脳に刻まれた記憶の「秘密」を前に、捜査にあたる者たちもまた、善良で潔白なばかりではない自らの内面や、過去に搦めとられた己れに対峙します。被害者と加害者と捜査官は、事件の因果の結び目で出会う互いの秘密を暴きあう存在。唯一最大の違いは、他者の命に干渉したか否かの一点です。
清水先生の迷いのない美しい絵が、猟奇的事件のむごたらしい被害者とおぞましい犯人とをフラットに描写することにも戦慄します。裂かれた腹から溢れ出た臓器のグロテスクささえ、1滴の血も描かれないだけでこうもショックが和らぐものでしょうか。
どうか『秘密1999』(第1巻第1話)と、ある少年の死(第2巻)のエピソードを読んでください。
前者はこのシリーズのタイトルを決した作品。休暇中のアメリカ大統領が死を前にSPを呼ばなかったのは何故か。その真相究明の場に読唇術のプロが呼ばれたのか何故か。エピソードゼロにあたるこの物語を20年以上前に掲載誌で読んだ時、凍りついた。死を賭してでも秘密にしておくはずだった心が白日のもとに曝される可能性。その暴露が不可逆的に誰かを傷つけるかも知れない可能性。「言いたくない」も「知りたくない」も無情に奪われ、死ぬことの恐怖の意味が変容する世界。それは生きることの恐怖と同義では…?
のちに会話しつつ目隠しを頼む薪の心情は、このエピソードの主人公の心情にリンクしていると思います。
後者の、少年の死は、ある一家惨殺事件の捜査中に起きます。彼がどのような少年であったかーーどういった特質で日々をどのように生き、愛されていたのかーーが明らかになるにつれ、もたらされた死のむごさと理不尽さが胸をえぐり、怒りと無念と哀しみで倒れそうになる。それでも、清水先生が描き出すこれら究極の愛の物語を多くの人に読んで欲しい。

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