コントラスト
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コントラスト

itz

硝子細工のような繊細さと諦めない強さ

ネタバレ
2021年10月14日
このレビューはネタバレを含みます▼ 大好きなitz先生。ずっっと楽しみにしていてやっと読めましたー。やっぱり物凄く良かった!
いつも想いが繋がるまでを大切に描いてくださる作家さん。
すれ違いざまに目が合うだけの関係だった人気者で目立つタイプの翔太と一人でいる事が多い優等生タイプの陽。
思春期特有の狭い世界が全てのように感じる焦燥や不安定さ、繊細な心の機微のひとつひとつが丁寧に綴られていて、それぞれが抱える過去の傷に対して互いが心の支えとなり、静かに惹かれ合っていく様がとても自然に描かれます。
派手な描写はないけれど、ああ、一緒にいることが本当に心地いいんだろうなと読み手に伝わる2人のやり取りに、少しずつ降り積もっていくように膨らむ想いが見えるようでした。

陽の隠していたい事は打ち明けるには覚悟がいるだろうけれど、翔太への想いが募れば募るほど隠し事がある方がきっと辛い。でも知ってしまった方は・・と翔太の事が心配でしたが、翔太の度量の深さと一つ一つ擦り合わせようとする優しさに感服!翔太のお友達の瑞希ちゃんも人の為に一生懸命になれる良い子で大好き。

そして終盤の過去回想からラストにかけての描写がほんとうに素敵で、大切に刻まれているきっと忘れる事のない鮮やかな記憶と、胸に響いてくる目映いくらいに溢れ出る「好き」の気持ちにもう鷲掴まれちゃいました。

描きおろしで陽の辛い過去に関わった人物の今現在の気持ちを知ることが出来たのもとても良かった。大好きな「ぼくらが恋を失う理由」の描き下ろしでも思いましたが、モヤっとしたものをそのままにしない作者様がとても好き。

陽の拠り所であった神田さんのスピンオフも読みたいな。
自分自身も必死に現実と折り合いをつけていた神田さんに陽が救われたのは事実だから、神田さんの幸せな姿も是非見せていただきたいです。

そうなの!?と驚きと安堵の特典ペーパーの「しんじよう」の翔太が可愛すぎ!笑
エチの描写はないし攻め受けもわからないままだけど、読後はしばらく余韻に浸って彼らが並んで歩いていく姿に想いを巡らせることが出来る、大満足なお話でした!
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