only you,only
」のレビュー

only you,only

麻生ミツ晃

ストーリー重視の必読書

2022年4月6日
稀代のストーリーテラーの名にし負う、内容重視の方にとっては外すべかざる名作です。
何回読んでも読了後、心臓がバクバクとうるさいのです。
名作には名場面が欠かせません。
scene1〜Last science まで毎話(7話)、心を揺さ振るシーンがあります。
しかも重要な各シーンが対応し合い、関わり続け、大きなうねりとなって読み手の心をビショビショに濡らしてきます。
お話の骨格がピシッと通っていて、しかも繊細に気持ちを揺らす相乗効果が確実に効いているからだと思います。
………
ミツ晃先生の作品を読んでいると、人の心とはかくも複雑で儘ならないものかと思うのです。
それが哀しいからか、たとえハピエンだとしても、終わり良ければ…では済まされない傷跡が確実に残っています。
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今作品はリーマンもの、ノンケとゲイ、カラダから、とBLあるあるの設定です。
ファンタジーでも特殊設定でも大事件が起こるわけでもありません。
なのに、とてつもなくドラマチックです。
心を掴むお話は、読み手の心をよくわかってくれるお話なんだなぁと、共感力とは違った、語るチカラの作用なんだと感嘆しきりです。
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ストーリー重視とは言え、身体を繋ぐシーンも素晴らしいです。
何ページにも渡るエチエロエロではないのに、熱や欲や愛がすごく伝わってきます。
熟読すると諦念や絶望や儚さなども見えてきます。
何回も読んでしまう作品とはこういう事なのかな?
儘ならないココロに自分を乗っけて一緒に涙したいんでしょうか。
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本作品は10年以上前に描かれているので、時代を感じるシーンがいくつかあります。
その時代だったからこそ生きてくる場面なのですが、たかが10年がこんなに今とは違うんだと実感しました。
あと描き下ろしのラストのページ、すごく好きでした。
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