墨と雪2
」のレビュー

墨と雪2

かわい有美子/円陣闇丸

攻めの包容力に受けも読者も癒やされまくり

ネタバレ
2022年7月4日
このレビューはネタバレを含みます▼ とても気に入って何回も読み返しています。かわい有美子先生の作品の中で一番好きです。
「墨と雪」→「墨と雪2(上下巻)」の3冊まとめて読むお話ですが、別作品「甘い水」の登場人物との絡みもストーリーにちょこちょこ出てくるので、そちらを先に読んでいる方がより作品を楽しめます。もちろん「甘い水」未読でも大丈夫です。

作者さんの他作品(平河寮シリーズ)では、はっきり明記はされていませんが攻めタイプキャラとして描かれている篠口が、「墨と雪」では、黒澤相手に「やや不本意ながら」受けポジションを許しています。ここが本作のCPの非常に魅力的な特徴で、強く推したい部分です!
とはいえ内容は、犯罪被害やPTSDなどをとことん描いておりとても辛く痛々しいものなので、多少読む人を選ぶ部分ではありますが、「墨と雪2」の2冊の分量をかけて、その傷をゆっくりと癒していくので、悲劇から後の、じわじわとした甘い幸福感を堪能することができます。作者の深い洞察力をもって丁寧に表現される、犯罪被害による酷い心の傷。それを癒す黒沢の行動には、彼の知性・胆力・包容力が惜しみなく発揮されていて、読んでいるこちらもその愛にうっとりし、幸せな幸せな気持ちにさせられます。

本来は可愛がったり甘やかしたりしたい側(攻め)である篠口が、上司であり余りにも隙のない男・黒澤相手に、仕方なしに時々は挿入を許す、といったドライな関係から2人は始まっており、そこも大人びていてニヤッとしてしまうような情事なのですが、黒澤はそんな篠口が可愛くて仕方ないし、何年でも待つよってスタンスなのです。堪らんカッコいい。
そんな2人なので、下巻ラスト頃のエチシーンに凄い好きなシーンがあってニンマリしちゃうし、こういう受けって最高やん、そしてそんな受けをモノにしちゃう攻めって最強やん、と大満足しました。

やや硬派な文体が、本作のテーマにマッチしていて、驚くほどに何度も読み返したくなります。挿絵もイメージにピッタリでとても良かったです。
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