向こうの人【電子限定描き下ろし付き】
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向こうの人【電子限定描き下ろし付き】

上野ポテト

あー、これは、心のウラ筋なぞられる…

ネタバレ
2022年10月9日
このレビューはネタバレを含みます▼ のっけからおかしなタイトルですみません。
エッチな意味じゃありません。
この作品を読んでる間、自分でも知らなかった心のひだをゾワゾワとなぞられているような感じがして浮かんだフレーズです。

主人公まくたの自意識は高いのに、周りからはそう見なされず、SNSで毒を吐きながら小物感を自覚している様子と、サシオフで会った相手エスが芸能人だったことで浮立つ姿。このまくたターンが続く第4話までまくたにイマイチ感情移入できない。読みながら、恋愛漫画とは主人公に共感して一緒に胸キュンしたり切なくなってナンボじゃないのか?作者からこういう居た堪れない主人公を温かく見守れるかどうか試されているのか?とどう読むのが正解か分からず混乱し、全く心が落ち着かない。恋愛ものとして話は進んでいるようなので一応読んではみるものの、読み心地はすっかりホラーなんである。

ところが第5話。ここで転機がやってくる。エスのターンになって、どうして芸能人のエスがまくたに興味を持ち、彼の心が高揚していったのかが分かる。SNSでのみまくたが気持ちを晒していたことで、寂しい人間であることに共感を覚え、コミュ障ならではの思考の持ち主であることも分かった上で会ってみて思ったとおりの反応をする。そんなところから小動物のようで可愛いという気持ちが芽生えたのでは。この頃まくたは周囲の価値観に左右される生活から脱却し毒っけが抜けて最初の印象から変化が生じる。
しかしエスも罪よの。芸能人相手にテンパる一般人を観察するような視線で見てるから戸惑うのも当然なのにイジワル。そんなまくたにエスが翻弄されて恋心を自覚する下りからは、前半、何の話を読まされているのかという戸惑いがあった分、ちゃんと恋愛ものだったんだと読んだ甲斐あった感が募り、2人の想いが通じたときは謎の達成感が…!

お伽噺のようだけど、エゴサしているあたりエスもネット上に人間の本音が出ると思うタイプで、4年も見ているうちにすっかり心のうちを掌握したつもりになっていたのに、そうならないままならなさに心乱され恋に堕ちたのでは?あー、これは恥ずかしい。主導権握っているつもりが、逆に翻弄されてるって…。そっちに萌えがあったのな…表紙タイトルが鏡文字なのもそれだから?

てっきり一般人目線で読ませる話なの?と思わせてからの視点の切替えで腑に落ちる展開が秀逸。ただレビューが割れるのも納得 笑
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