愛ってやつを教えてくれよ【単行本版】
」のレビュー

愛ってやつを教えてくれよ【単行本版】

塩味ちる

男前受けは国の宝だと思う同志よ、こちらへ

ネタバレ
2023年10月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ すみません、興奮のあまり、手が勝手にタイトルを打ち出してしまい、エラい壮大な言葉が並んでしまいました。

最初にゲイリーマン雪が登場する指輪を見つめる先に夜景が広がるシーンから、指輪を投げかけた雪がうなだれるまでのコマ。まるで映画のワンシーンのような、深い悲しみをたたえた表情に早くも期待感が高まり、グッと作品に引き込まれる。そんな中、女に捨てられたヒモ美空がホラー映画のように登場するのにクスリ。無駄なセリフもコマもないテンポで話が進む中で明らかにされる雪がノンケの恋人と8年交際した末、女に浮気された顛末。

仕事もきちんとできる男前な雪が、傷付いてボロボロになっているのを見て、幸せになってほしいと考える。できることなら自分が幸せにしたげたい。でもできない。なら、そこにいるヒモクズ野郎でいいから、雪を幸せにしてやって!てな感じで、頼りにしていいのかどうか分からないヒモクズ男美空(酷…)に、自分の願望を託して読み進めていきました。

美空は本当に人を好きになったことなくて人が自分に向ける好意にも無頓着なクズ。なのに、人の懐にすっと入り込むのが上手い。そんな美空と、身体の関係から始まってしまう雪。男前受け好きとしてはムッチリした身体付きとわざとらしくない反応が…最高です!
そして、冒頭で登場する指輪にまつわる雪の元カレとの思い出の重さと、対比するように描かれる美空にとっての恋愛の持つ意味の軽さ。そんな対照的な2人が交わり、美空の軽さに救われる雪と、雪を通じて人を愛する気持ちを学んでいく美空が、ゆっくり弧を描きながら近づいてく描写がドラマチック。人を愛する気持ちを知った美空が気持ちの上で雪に近付くにつれて、美空に愛を教えた雪が美空を可愛く、愛しく思う姿に胸熱です!沁み渡る多幸感、雪が愛を美空に教え、その美空が雪を救う構図…総284頁あるボリュームのお陰で、お互いに惹かれ合う2人にすっかり感情移入…誠に良き…!

また雪の会社の同僚の女子、前森、宮内の解釈(笑)と理解ある反応がオモロい!この好印象女子と魔性系同僚の岡部くんがこの作品のホッコリパートを盛り上げてくれてニヤニヤが止まりません。
描き下ろしの美空の美人ぶりと雪の男前ぶりの共演、巻末のオカン味ある雪もツボ!

これが初コミックスとは思えない手だれ感。次作も楽しみです!
いいねしたユーザ63人
レビューをシェアしよう!