フォール イン ピンスポット
」のレビュー

フォール イン ピンスポット

斎田千洋

演劇ファンとして、バカほど興奮したよね✨

ネタバレ
2024年7月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 観劇歴ウン十年の演劇ファンなんですが、この作品、程よくキラキラ成分をまぶしながら、しっかり芝居を作る過程が描き込まれ、その中で主人公が成長する過程も描いてあって、読み応えがハンパなかったです!

演劇物、俳優物BLは山のようにあるけれど、多くの作品は、俳優として輝いている姿への憧れなんかが先にあって、そのトキメキから恋に落ちる過程が描かれていると思う。
それらの作品群とこの作品の違いは、モテ男と自覚しているおうじゅが、バイト先の地味めな先輩たいちが、偶然大学の演劇サークルに所属していると知って好奇心で覗きに行った公演で、実は役者であるたいちの舞台上の輝いた姿を見た瞬間の衝撃と、その後の素に戻ったたいちの可愛らしさに心を射抜かれて人生の主役となった瞬間を、ピンスポットの照明を浴びせたショットで描いたシーンによく表れているように、隣人だった人物が舞台上に立った途端役者として放つ魅力の衝撃を描いている点と、舞台演出を上手く心情表現に使っていて、それが印象的な点にあると思うのです。

おうじゅは、たいちに近付くため素人ながら学生演劇に足を踏み入れ、我々もそれを追体験できるのだけれど、その劇中劇がいかにも、学生演劇!って感じの小劇場チックな設定の芝居と役名で、そのリアル感に驚き、役者が割り当てられた役の人物研究を紙に書いて役を作り込んでいく過程も描いてあって「いや、オイラの好きな役者さんもそんなことしてるって聞いているけど、そこまで細かく役作りの過程を描いた作品、今までなかったんだが…?」と、内心のモノローグが止まらず、気になる余り先生のX見たら、現役の俳優さんなんですね!なるほど、リアルで読み応えバッチリなはずです!

たいちの方は、舞台上の姿への憧れから好きになった先輩への思いに囚われていたのだけれど、役者同士としての関係性を壊したくなくて一歩踏み出せなくなってしまっていて。対照的に、おうじゅは一人の人間としてのたいちに惹かれて、追いかけてきたという関係性なので、たいちも、一歩踏み出せたんだろうな。分かるし上手い描き方だなと感じました。

タイトルは描き下ろしのおうじゅのセリフから。何にバカほど興奮したかはまあエチチなわけで😃はあ、続きが楽しみだ〜!きっとあの先輩も登場するんでしょうね。どう2人に絡んでくるのか、今から楽しみ。続刊もマストバイです❗
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