同志少女よ、敵を撃て
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同志少女よ、敵を撃て

逢坂 冬馬

戦争のことはちゃんと知るべきだ。

2024年9月1日
第二次世界大戦、ソ連対ドイツの中で女性だけの狙撃専門小隊のお話。
少女たちがどんな思いを持って戦争に巻き込まれ駆り出されてゆくのか、苦しみもがきながらも自分の正義をどう維持するのか。
狙撃兵という、特殊な役割。
覚醒してゆく感覚、躊躇=死。興奮=死。背中に、目の前に、いつも死がある。
すべてに理由を付けなければ保つことのできない精神を少女たちらしく涙を流すのですが戦争という悪魔は涙を奪い笑顔を奪い理性を奪うのです。
悪魔が与える生きる糧は”復讐”なんです。
やられたらやり返す。
目には目をです。

ソ連兵との第二次世界大戦のお話は耳に目にすることは多少なりともあり、戦後20数年生まれの私にすら、鬼の所業であったとプロパガンダの片鱗を感じることがありました。それほどに当時を生きてきた人々には恐怖だったということでしょう。
同じようにソ連兵にとってもドイツの所業は鬼であり悪魔であったのだと思います。
逆もしかり。
ドイツ兵を殲滅するのか、ドイツを殲滅するのか…大きな違いなのに判らなくなっていく程、心も体も疲弊する中彼女たちは毅然と理性を引き留めながら次の戦場へと送り込まれる…。苦しい。
集中して読んでしまうので余計に苦しくなります。

女性が戦場を見る。
戦場で戦う。
男性の目線では語り継げない女性目線の真実が浮き彫りにされていきます。戦争は私が行間を読むよりも何十倍も何百倍も悲惨で残酷だと言えるのでしょう。

そして最後まで”敵”とは何なのかを考えさせられます。
彼女たちの本当の敵は誰なのか…何なのか。
問いの答えは読者それぞれが読み解くのだろうと思います。

戦争作品の中ではとても読みやすいのではないかと思います。
ドラマチックでもあり、解釈次第ではロマンチックにもとらえることが出来る人もいるのではないか。
しかし、普段あまり大戦作品を読まない方には長編だけれども引きこまれやすく没入して読める作品だと思います。

是非。
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