リハーサル
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リハーサル

ARUKU

変わっていくものと、変わらないもの

ネタバレ
2025年1月10日
このレビューはネタバレを含みます▼ ※2016年発売アンソロジー掲載の読み切り作品を個人出版にて電子書籍化したものだそうです。重複注意※

自分のお葬式をリハーサルして欲しいと頼むのは、優彦の幼馴染で隣の家に住む紡。夏の明るさと若い汗が最も似合わないその儀式を、こうして欲しいと可愛らしい笑顔で伝えてきます。短編ならではのスピード感で押し寄せてくる感情がとても繊細で美しいので、あまりネタバレはせずにそのまま作品を受け止めて欲しいです。そんな訳で、以下からがネタバレ感想。

散りばめられた言葉と眼差しが語るのは、控えめにきらめく恋と純粋で宝物のようなものたち。旅立つ側が長い時間をかけて出した結論と覚悟は、残される者への優しさと愛が込められています。真っ直ぐに向けられたその想いは、まるで向日葵のように力強く美しい。はなむけにとねだる言葉は優彦の苦しみと傷を露わにしますが、残された者がなるべく泣いて暮らさないようになんて到底無理な話。壁に飾られた写真が雄弁に語るように、忘れないし、全てを抱えて生きていく。それでも願うのは、愛しい君が悲しみに飲み込まれてしまうことのないように。こんなのもう、ARUKU先生の言葉と世界で語られたら泣いてしまうに決まってる!年月が流れ何かが変わってしまっても、想う心が変わらなければ自由自在に出現できる。なんて哀しくて、美しいんでしょう。とても慰められました。
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